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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.25
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2007.01.22

バイオレンス目指した。

挫折した気がする。


暗く沈みこんでいた高杉の意識が不意に浮上した。それと同時に身体中が痛んだ。
何処が痛いとかではなく、全身の至る所が痛む。
その原因はすべて金時にある。金時の機嫌はムラがあり上下の差が激しい。
酷く沈んでいる時の金時は高杉を叩き殴り蹴り上げて踏み付けにじって犯す。
その間ずっと愛してる、愛してるという言葉を絶えず高杉に降り注ぎ続ける。
高杉は金時の暴力から逃げない。抵抗もしない。自分の身を守ろうともしない。
ただ身を投げ出して金時のしたいようにさせる。もちろん痛くて苦しい。その痛
みは何日も持続し身体が満足に動かなくなる事もあり、いい事なんて何一つとし
てない。それでも高杉は逃げださない。金時が愛と呼ぶものすべてをこの身に受
け続けた。
高杉が意識をなくしている間に金時が身体を清めベッドに横たわらせておいてく
れたようで、痛み以外に身体に感じる不快感はない。
しかし何の手当ても施されていない全身は痣だらけになり殴られた顔は赤く腫れ
上がり始めている頃だろう。だが今は高杉にとってそんなことどうでもいいこと
だった。
高杉はまず視線だけ動かして金時の姿を探した。
視界に金髪は入ってこず、仕方なく身体を動かせば軋んだような音をたてた気が
したが無視してさらに動かしてなんとか上体を起こした。
その際踏みにじられた右腕が酷く痛んで使い物にならないのを感じた。
だが今はそれにも構わず錆び付いたように動かしづらい首を上げて金時を探した。
闇に溶け込みきれていない鮮やかな金髪は部屋の奥、テーブルにうなだれるよう
にして俯せていた。背中を丸くして小さくなっている。
高杉はベッドの上で頼りないその背中を見つめていた。
自分がしたことに対する罪の意識に苛まれ、押し潰されうちひしがれているその
様に先程までの荒々しさは欠片も見えない。
泣いてる。高杉はそう思った。実際は金時の目は乾ききっているのだと高杉は知
っているがそれでも金時が泣いていると思った。
悲鳴をあげる身体を無理やり動かして、ベッドから降りた。無意識に洩れる呻き
声は塞ぎ込んでいる金時には届いていないようで金時は俯いたままだ。
少しずつ少しずつ距離を詰めて、なんとか持ち上げられた左腕でそっと金時を抱
いた。
背中に耳を押し当てればじわりと温もりが広がっていく。高杉の温度も金時に届
いたのだろう。
金時は己を抱く高杉の手にそっと触れるとゆるゆると顔を上げて肩越しに高杉を
振り返った。
「…高杉…」
ぽつりと零れ落ちた声は掠れていて、高杉は軋む腕に力を込めてその呟きに応え
た。
「高杉…」
今にも泣いてしまいそうな声にも高杉は金時に顔を向けなかった。
きっと今自分は酷い顔をしている。こんな姿を見せたら金時はまた傷ついてしま
うだろうと思った。
「ごめんな、ごめん、ごめん…」
震えている声。あぁ泣いてしまいそうだ。
泣かないで。泣かないで。泣かないで。
金時が決して泣く事などない事を高杉は分かっていたが願わずにはいられなかった。
回を重ねるごとに酷くなる怪我は、いつか殺されるのではないかと高杉に思わせ
る。そうなる前に別れた方がいいのかもしれない。
だが闇に紛れ一人どうしようもなく佇んでいる金時を高杉は放ってはおけないのだ。
「ごめん…」
呟きながら金時が高杉の腕を外した。高杉から離れ向き直るとそっと俯いている
高杉の顎に手をやり上を向かせた。
その動作一つでも高杉の身体は叫び上げ高杉はわずかに身体を強張らせたが、そ
れでもじっと金時を見上げた。
金時は高杉と目を合わせると痛そうに目を細め微笑んだ。
それから触れるだけのキスを高杉の唇に落とした。
「それでもね、ホントに愛してるんだよ。高杉のこと…」
「………」
唇に言葉がぶつかる程の位置から呟かれた言葉に、高杉は言葉少なに返した。
「…知ってんよ…」
だからそんなに不安がらないで。何も怖くなどないのだから。
高杉は金時をもう一度抱き締めてやりたかったが、もう身体が満足に動かずぎこ
ちない動作で金時の脚に触れる事くらいしか出来なかった。
それでも脚に何かが触れた感触に気付いた金時が高杉を抱き締めた。縋るように。不安さを包み隠さずに。
何もかもが痛みに直結したが高杉は歯を食いしばりそれに耐えた。それから懸命
に腕を上げ金時の背中に回した。



おまえの前から消えてやることこそ俺がおまえのために出来る唯一のことかも知
れないけれど、そんなこと出来ない俺を許して欲しい。
だからもう、殺してくれて構わないから。それでおまえが楽になれるならおまえ
のその手で俺の息の根を止めてくれ。

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