いろいろ置き場
なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。
2007.01.21
眠れない夜がある。
目を閉じて何度も寝返りを繰り返すが寝つけない。闇に慣れた目はわずかな光を
も捉え、窓から差し込む青白く凍り付いた光で部屋の輪郭がよく見えた。
「………」
高杉は今一度寝返りをうつと、体を起こして布団から抜け出した。
真夜中の訪問者。けたたましく鳴り響いた呼び鈴はきっと隣りの部屋にも響いた
に違いない。
夢の国から引き戻された銀八は閉じていた瞼をこじあけて閉ざされた戸に目をや
った。
「………誰だよこんな時間に…」
時計を見れば草木も眠る午前2時を指している。アポなしで突然やってくるには
常識外の時間帯だ。
シカトここうかな。銀八がそんなことを思うともう一度呼び鈴がなる。
このまま出るまで鳴らされるようなことがあれば、先にお隣りさんからの苦情が
来そうだ。
銀八は眠い目をこすり頭を抱えながら鍵を開けてドアを開けた。
「こんな時間にどちらさまだコノヤロー…って」
闇に紛れるように立っていた少年を、銀八は瞬きを繰り返し見つめた。
「高杉?なにしてんのこんな時間に」
「眠れねぇ」
「はぁ?」
銀八を見つめる目は言葉通りぱっちりと開いていて、黒い瞳に銀八の白さがよく
映えた。
「眠れねぇ」
同じ言葉を繰り返す高杉を銀八は見下ろして、とりあえず部屋の中に招き入れた
。
闇から抜け出したような彼はひんやりと夜の気配を纏っていた。
銀八がつけた室内の安蛍光灯の光が二人の目を刺す。
闇に慣れた目には暴力的なまでの光源で高杉はその光を避けるように俯いて目を
細め、目が光に慣れるのを待った。
「…なんなの、こんな時間に」
銀八の不機嫌そうな声が頭上から降ってくる。そちらに目を向ければ、銀八は眠
たそうに半開きな目を高杉に向けていた。がしがしと頭を掻いて、ぼさぼさだっ
た頭がさらに酷いことになる。
「だから眠れねぇっつってんだろ」
もう3度目になる言葉を高杉は繰り返した。
眠れないから、ベッドを抜け出し部屋を後にして歩いて銀八のアパートに向かっ
ていた。眠りに落ちた町は何処からか虫の音が聞こえるばかりで、空気は張り詰
めたように冷たい。街灯が伸ばす自分の影を踏み踏み此所までたどり着いた。
「俺にどうしろってのよ。何?ホットミルクでも飲む?」
「いらねぇ」
「あっそ。…俺もう寝ていい?俺ァ寝てたんだよ眠いんだよ」
大きな欠伸をして、銀八は銀八が抜け出たままの布団に向かう。どっこいしょと
ぽっかりと空いていたところに潜り込んだ銀八を高杉は少し眉を寄せ見つめ、そ
ばに寄るとのしっと銀八を布団の上から押し潰した。
「ぅぎゅ…。なんなんだよおめーはよォ」
「眠れねぇんだよ。暇。相手しろ」
「嫌だね。おめーも寝ろ。ほれ、特別に布団入れてやるから」
パジャマ代わりのシャツの上に着ていたパーカーを脱ぐように言われ、脱げば抱
きすくめられて、押さえ付けられるように布団のなかに押し込まれた。
狭い狭いと文句を洩らす銀八の温もった布団は心地よかったけれど、眠りへと誘
うには至らない。
「銀八」
「あんだよ…もう寝かせろよ」
煩わしげに顔をしかめられて、背を向けられる。
完全拒否の姿勢だが、そんなことを気にするような高杉ではない。
「銀八ィ」
「あーもううっせ…おやすみ」
「なんか喋れ」
「はぁ?」
「俺が寝るまで」
「ざけんなてめー。追い出すぞコラ」
「なんでもいいから」
「無理。おやすみ」
「オイコラ起きろ。喋れっつってんだよ」
「だァらうっせーっつーの…はいはいいい子だからおやすみ次喋ったらマジ追い
出すかんな」
「………」
抱き締められて、温もりが近くなった。
銀八は一度身動ぎして丁度いい体勢になると大きく息をついてそれきり口を開か
なかった。すよすよと一定の寝息が頭上から聞こえるばかりだ。
目許まで布団に埋もれている上銀八の腕の中にいるのは正直暑かった。銀八もそ
れを感じたのか、小さく呻くと腕を離し寝返りをうって高杉に背を向けてしまっ
た。
「…銀八…」
「………」
「オイ」
「………」
「………」
話しかけても帰るのは寝息ばかりだ。
目の前の背中をじっと見つめる。広い背中。銀八は逞しい体つきではないけれど
、何故だかとても頼れるもののように思えた。
「………」
そっとその背に触れてみる。反応はない。
「………」
続いて額を押しつけてみる。やはり反応はない。
じわりと温もりが広がって、銀八の鼓動を感じた。あぁ生きてるんだなぁと、ぼ
んやりと思った。
「………銀八」
もう一度呼び掛けてみた。反応は、なかった。
「………」
銀八の生きている音に耳を傾ける。
昔聞いたことがある。
時計の音が母親の胎内で聞いていた母親の心臓の音が心を落ち着かせて眠らせて
くれる、と。試してみたがただ耳障りなだけで余計眠れなかったので部屋の時計
を無音のものに変えた。
何故だろう。銀八の音はやけに心に染み込んでくる。
次第に瞼が重くなってきて、うとうとと瞼の開閉を繰り返した。上下の瞼の逢瀬
を引き裂けなくなる。
真っ暗な世界で声を聞いた気がした。
『おやすみ』
その声に誘われるように、高杉は眠りに落ちた。
眠れない夜、その温もりは速効性の睡眠薬。
依存性にはご注意を。
目を閉じて何度も寝返りを繰り返すが寝つけない。闇に慣れた目はわずかな光を
も捉え、窓から差し込む青白く凍り付いた光で部屋の輪郭がよく見えた。
「………」
高杉は今一度寝返りをうつと、体を起こして布団から抜け出した。
真夜中の訪問者。けたたましく鳴り響いた呼び鈴はきっと隣りの部屋にも響いた
に違いない。
夢の国から引き戻された銀八は閉じていた瞼をこじあけて閉ざされた戸に目をや
った。
「………誰だよこんな時間に…」
時計を見れば草木も眠る午前2時を指している。アポなしで突然やってくるには
常識外の時間帯だ。
シカトここうかな。銀八がそんなことを思うともう一度呼び鈴がなる。
このまま出るまで鳴らされるようなことがあれば、先にお隣りさんからの苦情が
来そうだ。
銀八は眠い目をこすり頭を抱えながら鍵を開けてドアを開けた。
「こんな時間にどちらさまだコノヤロー…って」
闇に紛れるように立っていた少年を、銀八は瞬きを繰り返し見つめた。
「高杉?なにしてんのこんな時間に」
「眠れねぇ」
「はぁ?」
銀八を見つめる目は言葉通りぱっちりと開いていて、黒い瞳に銀八の白さがよく
映えた。
「眠れねぇ」
同じ言葉を繰り返す高杉を銀八は見下ろして、とりあえず部屋の中に招き入れた
。
闇から抜け出したような彼はひんやりと夜の気配を纏っていた。
銀八がつけた室内の安蛍光灯の光が二人の目を刺す。
闇に慣れた目には暴力的なまでの光源で高杉はその光を避けるように俯いて目を
細め、目が光に慣れるのを待った。
「…なんなの、こんな時間に」
銀八の不機嫌そうな声が頭上から降ってくる。そちらに目を向ければ、銀八は眠
たそうに半開きな目を高杉に向けていた。がしがしと頭を掻いて、ぼさぼさだっ
た頭がさらに酷いことになる。
「だから眠れねぇっつってんだろ」
もう3度目になる言葉を高杉は繰り返した。
眠れないから、ベッドを抜け出し部屋を後にして歩いて銀八のアパートに向かっ
ていた。眠りに落ちた町は何処からか虫の音が聞こえるばかりで、空気は張り詰
めたように冷たい。街灯が伸ばす自分の影を踏み踏み此所までたどり着いた。
「俺にどうしろってのよ。何?ホットミルクでも飲む?」
「いらねぇ」
「あっそ。…俺もう寝ていい?俺ァ寝てたんだよ眠いんだよ」
大きな欠伸をして、銀八は銀八が抜け出たままの布団に向かう。どっこいしょと
ぽっかりと空いていたところに潜り込んだ銀八を高杉は少し眉を寄せ見つめ、そ
ばに寄るとのしっと銀八を布団の上から押し潰した。
「ぅぎゅ…。なんなんだよおめーはよォ」
「眠れねぇんだよ。暇。相手しろ」
「嫌だね。おめーも寝ろ。ほれ、特別に布団入れてやるから」
パジャマ代わりのシャツの上に着ていたパーカーを脱ぐように言われ、脱げば抱
きすくめられて、押さえ付けられるように布団のなかに押し込まれた。
狭い狭いと文句を洩らす銀八の温もった布団は心地よかったけれど、眠りへと誘
うには至らない。
「銀八」
「あんだよ…もう寝かせろよ」
煩わしげに顔をしかめられて、背を向けられる。
完全拒否の姿勢だが、そんなことを気にするような高杉ではない。
「銀八ィ」
「あーもううっせ…おやすみ」
「なんか喋れ」
「はぁ?」
「俺が寝るまで」
「ざけんなてめー。追い出すぞコラ」
「なんでもいいから」
「無理。おやすみ」
「オイコラ起きろ。喋れっつってんだよ」
「だァらうっせーっつーの…はいはいいい子だからおやすみ次喋ったらマジ追い
出すかんな」
「………」
抱き締められて、温もりが近くなった。
銀八は一度身動ぎして丁度いい体勢になると大きく息をついてそれきり口を開か
なかった。すよすよと一定の寝息が頭上から聞こえるばかりだ。
目許まで布団に埋もれている上銀八の腕の中にいるのは正直暑かった。銀八もそ
れを感じたのか、小さく呻くと腕を離し寝返りをうって高杉に背を向けてしまっ
た。
「…銀八…」
「………」
「オイ」
「………」
「………」
話しかけても帰るのは寝息ばかりだ。
目の前の背中をじっと見つめる。広い背中。銀八は逞しい体つきではないけれど
、何故だかとても頼れるもののように思えた。
「………」
そっとその背に触れてみる。反応はない。
「………」
続いて額を押しつけてみる。やはり反応はない。
じわりと温もりが広がって、銀八の鼓動を感じた。あぁ生きてるんだなぁと、ぼ
んやりと思った。
「………銀八」
もう一度呼び掛けてみた。反応は、なかった。
「………」
銀八の生きている音に耳を傾ける。
昔聞いたことがある。
時計の音が母親の胎内で聞いていた母親の心臓の音が心を落ち着かせて眠らせて
くれる、と。試してみたがただ耳障りなだけで余計眠れなかったので部屋の時計
を無音のものに変えた。
何故だろう。銀八の音はやけに心に染み込んでくる。
次第に瞼が重くなってきて、うとうとと瞼の開閉を繰り返した。上下の瞼の逢瀬
を引き裂けなくなる。
真っ暗な世界で声を聞いた気がした。
『おやすみ』
その声に誘われるように、高杉は眠りに落ちた。
眠れない夜、その温もりは速効性の睡眠薬。
依存性にはご注意を。
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