いろいろ置き場
なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。
2007.01.21
マキシマ登場。
(やられた…!)
穏やかな昼下がりの賑やかな教室でK'は一人拳を握り締めうなだれていました。
嫌な予感はしてたんだ。
お弁当をあけたK'の目に飛び込んで来たのは、おかずなしの日の丸弁当(京用)で
した。
京がK'に弁当を手渡す際、わざと自分の弁当をK'に渡したに違いありません。本
来のK'のお弁当の中身はおいしそうなおかずがしっかりと詰められた母の愛に満
ちたものなのですから。
京は自分だけ酷い日には日の丸すらない弁当に不満を抱いていました。
『俺だけ弁当の格が全く違うのは差別だと思います。そりゃ日の丸弁当だろうが
愛する妻の作った弁当、略して愛妻弁当だ。けど愛がねーよ愛が。日の丸に愛込
めてんだとしたらそりゃちと無理があんだろ。それともなにか?梅干しが愛か?
あなた梅干し好きでしょってことか?好きだけどよ。それすらない日もあんのは
どういうことだ?あ?きっきり説明しやがれ』
『単に貴様が弁当に詰めるはずのおかずを朝食べるのが悪い。口数の多い男は嫌
われるぞ。黙れ永遠に』
脳裏を過ぎる父母の会話。その会話の後バッテンのついたマスクを付けて沈黙し
ていた父。
知っていたのにどうして自分は素直に京から弁当を受け取ってしまったのだろう
。朝見たあのニヤニヤ笑いがK'の神経を逆撫でします。
ギリギリと握り締めた右手のグローブが音を立てました。
「あんのやろォォオ!!!」
思いきり振り下ろした右手で机は大破。
K'君、生活指導室にお呼び出し決定です。
K'の担任兼生活指導部長のマキシマはイスに浅く腰掛け大股開いているK'に溜め
息を付きました。
「学校の備品を壊すなと、何度言えば分かるんだK'」
「すぐ壊れるもろい作りしてる方が悪ィんだよ」
「おまえ、あの草薙京の息子だな。そっくりだ」
「俺は母さんの息子だ!!」
また振り上げられた右手は机を破壊しました。いきり立つK'を宥めながらマキシ
マは二人の息子だろうとは口にしませんでした。バカなところも草薙京そっくり
だとも。そんなことを口にしたらまた怒りだすのは目に見えています。マキシマ
は溜め息をついて座らせたK'を見下ろしました。
K'が苦労して生きているのはマキシマもわかっています。なにせK'は人一倍独占
欲の強い草薙京の息子なのですから。
ちょっと庵に触れようものなら俺のもんに触るんじゃねぇよと相手を火ダルマに
してボディブローをたたき込むような男です。
あの男はきっと実の息子にすら妻をとられることをよしとはしていないでしょう
。可哀相なK'はなんの落ち度もないのにあの鬼父にいじめられてきたのかとマキ
シマは思わず目頭を押さえます。
「強く生きろよ…。俺はおまえの味方だからな…ぐす」
「? あ、あぁ」
急に泣き出したマキシマにK'は彼を訝しげに見つめました。何泣いてんだこいつ
。そして何言い出してんだ。ごもっともな意見です。
「せんべいでも食うか?甘いぞ」
「いるか」
「ならパフェでも食うか?俺のおごりだ」
「いらねーよ。そのカツ丼でも食うかみたいなノリやめろ!此処はブタ箱か!!
」
「ほぉ、ブタ箱なんて単語知ってたのか…賢くなったなおまえも。褒美に飴をや
ろう。ハッカだ」
「…ヒトをバカにすんのも大概にしろよ…」
唸りながらドロップスの缶を差し出されれば思わず手のひらを上に向けてK'は白
い飴を受け取りました。
「だがカツ丼を出すのはブタ箱じゃなく取調室だ」
「………」
指摘され黙り込んだK'はハッカを口の中に転がしながらそっぽを向きます。マキ
シマは胸ポケットから取り出したチョコを食べながらふてくされるK'を見下ろし
ました。
「まぁ冗談はさておき」
「わかりづれぇんだよてめーの冗談は」
「物にも人にも、暴力は慎まんと。確か八神の嫌いなものは暴力だろう」
「あ?なんでてめーがそんなこと知ってんだよ。まさか狙ってんのか?母さんの
こと狙ってんのか?母さんには夫も子供もいんだよ。あんな落第野郎でも母さん
の夫なんだよ。ざけた真似すんじゃねーぞ」
マキシマの胸倉を掴みやーさんバリにメンチ切るK'はそこいらの少年少女、教師
に他校生、果ては本職の方すら身を竦め「やめてください。金なら払いますから
」と勝手に財布を差し出してきそうな迫力でしたが、マキシマには子猫が顔を引
っ掻こうと身を乗り出して来たようなものです。
こいつ本当に母親が好きなんだなぁ、と思いながらマキシマはどうどう落ち着け
落ち着けとK'を宥めます。
そして、まだただでさえ悪い目付きを鋭くして頭から所か右手に炎を纏いそうな
気配を色濃く滲ませるK'に優しく諭します。
「俺が言いたいのは、そんな無闇に暴力を振るうような奴は母親に嫌われるぞっ
てことだ」
「な………」
母親に嫌われる。K'にとってそれはあってはならない一大事です。
そんな馬鹿な。だって父親は俺以上に好き勝手やりながら、それでも一応母さん
はそんな奴のことを認めたくはないが愛してる(だからこそ俺もレオナも生まれた)
じゃないか。なのに俺が嫌われる?
K'はぐるぐる悩み始めます。
ちなみに、K'は子供は夫婦の愛の結晶、コウノトリが愛し合う夫婦のもとに届け
てくれるものだという、現実を子供に告げられない大人の都合の嘘をこの歳にな
っても信じています。こいつは保健体育や生物の授業の何を聞いて来たんでしょ
う。誰かこいつに教えてあげてください。子供は愛なんかなくても生まれますよ
、と。
今にもわっかに結んだ縄を梁にでもくくり付けそうな程落ち込んだK'に、言った
マキシマが困惑してしまいます。まさか此処までの威力があるとは。
言葉の力は凄まじいな、いや、K'の母親への思いか?どちらにしても軽くドン引
きものです。
まだ嫌われたわけじゃないんだからというマキシマのフォローも右から左。まる
で聞いちゃいないK'は慰めに手渡された飴の詰まった袋を突き返す力も無い程で
、抜け殻のような状態で生活指導室を後にし、帰路につきました。
穏やかな昼下がりの賑やかな教室でK'は一人拳を握り締めうなだれていました。
嫌な予感はしてたんだ。
お弁当をあけたK'の目に飛び込んで来たのは、おかずなしの日の丸弁当(京用)で
した。
京がK'に弁当を手渡す際、わざと自分の弁当をK'に渡したに違いありません。本
来のK'のお弁当の中身はおいしそうなおかずがしっかりと詰められた母の愛に満
ちたものなのですから。
京は自分だけ酷い日には日の丸すらない弁当に不満を抱いていました。
『俺だけ弁当の格が全く違うのは差別だと思います。そりゃ日の丸弁当だろうが
愛する妻の作った弁当、略して愛妻弁当だ。けど愛がねーよ愛が。日の丸に愛込
めてんだとしたらそりゃちと無理があんだろ。それともなにか?梅干しが愛か?
あなた梅干し好きでしょってことか?好きだけどよ。それすらない日もあんのは
どういうことだ?あ?きっきり説明しやがれ』
『単に貴様が弁当に詰めるはずのおかずを朝食べるのが悪い。口数の多い男は嫌
われるぞ。黙れ永遠に』
脳裏を過ぎる父母の会話。その会話の後バッテンのついたマスクを付けて沈黙し
ていた父。
知っていたのにどうして自分は素直に京から弁当を受け取ってしまったのだろう
。朝見たあのニヤニヤ笑いがK'の神経を逆撫でします。
ギリギリと握り締めた右手のグローブが音を立てました。
「あんのやろォォオ!!!」
思いきり振り下ろした右手で机は大破。
K'君、生活指導室にお呼び出し決定です。
K'の担任兼生活指導部長のマキシマはイスに浅く腰掛け大股開いているK'に溜め
息を付きました。
「学校の備品を壊すなと、何度言えば分かるんだK'」
「すぐ壊れるもろい作りしてる方が悪ィんだよ」
「おまえ、あの草薙京の息子だな。そっくりだ」
「俺は母さんの息子だ!!」
また振り上げられた右手は机を破壊しました。いきり立つK'を宥めながらマキシ
マは二人の息子だろうとは口にしませんでした。バカなところも草薙京そっくり
だとも。そんなことを口にしたらまた怒りだすのは目に見えています。マキシマ
は溜め息をついて座らせたK'を見下ろしました。
K'が苦労して生きているのはマキシマもわかっています。なにせK'は人一倍独占
欲の強い草薙京の息子なのですから。
ちょっと庵に触れようものなら俺のもんに触るんじゃねぇよと相手を火ダルマに
してボディブローをたたき込むような男です。
あの男はきっと実の息子にすら妻をとられることをよしとはしていないでしょう
。可哀相なK'はなんの落ち度もないのにあの鬼父にいじめられてきたのかとマキ
シマは思わず目頭を押さえます。
「強く生きろよ…。俺はおまえの味方だからな…ぐす」
「? あ、あぁ」
急に泣き出したマキシマにK'は彼を訝しげに見つめました。何泣いてんだこいつ
。そして何言い出してんだ。ごもっともな意見です。
「せんべいでも食うか?甘いぞ」
「いるか」
「ならパフェでも食うか?俺のおごりだ」
「いらねーよ。そのカツ丼でも食うかみたいなノリやめろ!此処はブタ箱か!!
」
「ほぉ、ブタ箱なんて単語知ってたのか…賢くなったなおまえも。褒美に飴をや
ろう。ハッカだ」
「…ヒトをバカにすんのも大概にしろよ…」
唸りながらドロップスの缶を差し出されれば思わず手のひらを上に向けてK'は白
い飴を受け取りました。
「だがカツ丼を出すのはブタ箱じゃなく取調室だ」
「………」
指摘され黙り込んだK'はハッカを口の中に転がしながらそっぽを向きます。マキ
シマは胸ポケットから取り出したチョコを食べながらふてくされるK'を見下ろし
ました。
「まぁ冗談はさておき」
「わかりづれぇんだよてめーの冗談は」
「物にも人にも、暴力は慎まんと。確か八神の嫌いなものは暴力だろう」
「あ?なんでてめーがそんなこと知ってんだよ。まさか狙ってんのか?母さんの
こと狙ってんのか?母さんには夫も子供もいんだよ。あんな落第野郎でも母さん
の夫なんだよ。ざけた真似すんじゃねーぞ」
マキシマの胸倉を掴みやーさんバリにメンチ切るK'はそこいらの少年少女、教師
に他校生、果ては本職の方すら身を竦め「やめてください。金なら払いますから
」と勝手に財布を差し出してきそうな迫力でしたが、マキシマには子猫が顔を引
っ掻こうと身を乗り出して来たようなものです。
こいつ本当に母親が好きなんだなぁ、と思いながらマキシマはどうどう落ち着け
落ち着けとK'を宥めます。
そして、まだただでさえ悪い目付きを鋭くして頭から所か右手に炎を纏いそうな
気配を色濃く滲ませるK'に優しく諭します。
「俺が言いたいのは、そんな無闇に暴力を振るうような奴は母親に嫌われるぞっ
てことだ」
「な………」
母親に嫌われる。K'にとってそれはあってはならない一大事です。
そんな馬鹿な。だって父親は俺以上に好き勝手やりながら、それでも一応母さん
はそんな奴のことを認めたくはないが愛してる(だからこそ俺もレオナも生まれた)
じゃないか。なのに俺が嫌われる?
K'はぐるぐる悩み始めます。
ちなみに、K'は子供は夫婦の愛の結晶、コウノトリが愛し合う夫婦のもとに届け
てくれるものだという、現実を子供に告げられない大人の都合の嘘をこの歳にな
っても信じています。こいつは保健体育や生物の授業の何を聞いて来たんでしょ
う。誰かこいつに教えてあげてください。子供は愛なんかなくても生まれますよ
、と。
今にもわっかに結んだ縄を梁にでもくくり付けそうな程落ち込んだK'に、言った
マキシマが困惑してしまいます。まさか此処までの威力があるとは。
言葉の力は凄まじいな、いや、K'の母親への思いか?どちらにしても軽くドン引
きものです。
まだ嫌われたわけじゃないんだからというマキシマのフォローも右から左。まる
で聞いちゃいないK'は慰めに手渡された飴の詰まった袋を突き返す力も無い程で
、抜け殻のような状態で生活指導室を後にし、帰路につきました。
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