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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.26
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2007.01.21
父、京…現役高校生。
母、庵…ベース弾いて生計を立てる。
息子、K'…ネスツ高校2年生。
娘、レオナ…怒幼稚園に通う5歳。

そんなパラレル。 

鳴り出した目覚ましをK'は手探りで探し当て黙らせます。
「…ん…」
K'は眠い目を擦り体を起こしました。いつまでも惰眠を貪る父親とは違うという
意地だけでK'は起きるのです。
部屋を出て顔を洗いリビングに向かえばおいしそうな匂いと焦げついた匂いが入
り交じり、わずかに焦げ臭さが優勢です。
「おはよ」
「ん」
台所にいる庵に声を掛ければ、庵は腕を組んでフライパンを見つめていました。
(焦がした…)
フライパンの中にはうっかり真っ黒になったウインナーが数本。捨てるのは勿体
ない。京にでも食わせるかと結論づけました。
焦げは癌の元。子供たちに食べさせる訳にはいきませんから。
K'はキッチンを通り過ぎテーブルに着きます。
テーブルには朝食にトーストと目玉焼きにベーコン、牛乳が並び、隅の方にはK'
とレオナの分のお弁当のおかずが冷ますために広げてありました。見た目も綺麗
で彩りも豊か。おいしそうです。
「おはよう」
「おはよう」
レオナが起きてきました。寝起きの髪が跳ねていますがおめめはパッチリ。寝起
きは最高です。
「「「いただきます」」」
食卓を囲んで朝食を取ります。黙々と。テレビは付けっ放しです。朝のニュース
が昨日のプロ野球の勝敗を告げていました。
「ごちそうさまでした」
先に食べおえたK'は自分の食器を運び水に漬けます。それから制服に着替えに部
屋に戻りました。
レオナも食べ終わり庵は洗い物に取り掛かろうとした時、京がやっと起きてきま
した。たいした寝ぼけ野郎です。
「あぁ?もう朝飯終わってんのかよ…」
綺麗に片付いたテーブルを見て顔をしかめます。
「オイ庵、俺の飯…」
「京」
文句を言おうとカウンターを振り返った京は呼び掛けられて言葉を切りました。
カウンター越しにいる庵が無表情のまま手招きしたので素直にカウンターに身を
乗り出します。
「なんだよ」
「あーん」
「あ?あー…」
ずいと焦点が合わぬ程近付けられたものの正体がわからぬまま、新妻の愛にあふ
れた「あーん」などではない暗く低い「あーん」にも京は反射的に口を開きまし
た。
無防備に開いた口に、庵は無造作に焦がしたウインナー3本をまとめて突っ込み
ました。京がそれを咀嚼し飲み込むのまで見届けると「よし」と言って空になっ
たフライパンを洗い始めました。
「よし、じゃねーよ。なんかすっげぇ苦いっつーか焦げてたのは俺の気のせいか
?」
「ビターに仕上げてみた」
「嘘吐くんじゃねーよ!単に焦がしただけだろ!!正直に言え!!!」
さらっと答えた庵に京はがなりたてましたが庵は無視です。
いつの間にか近くに来ていたレオナが純粋な瞳で二人のやりとりを見つめていま
した。手にはブラシとネックレスが握り締められていました。
「髪か。其処に座っていろ」
「…了解」
レオナは言われた通り朝食時に座っていた席に座り、庵の洗い物が終わるのを黙
って待ちます。
京はそんなレオナの斜め前に座ると一人遅い朝食を取り始めました。そしてレオ
ナに語りかけます。
「おめーももうちょっと愛想がありゃいいのにな。せっかく顔が可愛いのに、性
格まで庵に似ちまったか」
「………別に、今のままで困らないわ」
「ちょっと笑ってみ。ほら。にこって」
「………」
「くだらんことを言うな」
後ろから拳を食らい伏した京を気にも止めず、庵はレオナの後ろに回ると髪にブ
ラシを通し始めた。
まだ少し寝癖の残る青い髪を一つにまとめネックレスで結わいてやります。
その間に制服に身を包んだK'が鞄を抱えリビングに戻ってきました。
「行って来る。弁当…」
「ほらよ」
「………」
京に弁当を突き付けられて、K'は複雑そうな顔で弁当を見つめ、それから京を見
ました。京はニヤニヤと笑っています。
「…サンキュ」
「んじゃ行ってらっしゃい」
むっつりとした表情で弁当を受け取ったK'は背中に投げ付けられた京の声を聞き
ながら家を出ました。
エレベーターを待っている最中、ピー…ンとK'の第六感が働きました。
「………」
K'は家の方を向くと、また家に足を向けました。



K'のいなくなった家の中では、お父さんがお母さんにセクハラ中でした。
レオナの身支度をチェックしハンカチ、ちり紙が鞄に入っているかをレオナと確
認していた庵に京が後ろからのし掛かっていました。庵はそんなもの完全無視で
す。
「忘れ物はないな」
「…はい」
「よし」
レオナに鞄をかけてやり帽子を被せてやります。
「そういや俺におはようのちゅーがなかったんじゃねーか」
「まだバスまで時間があるな。テレビでも見ていろ」
「…了解」
「オイ無視すんなよ」
声に不機嫌さを滲ませた京を庵は煩わしげに見ました。
「耳元で喚くな。何故俺が貴様にそんなことをせねばならない」
「夫婦には必須の習慣だろうが。真っ当な子供の教育にはまず真っ当な夫婦であ
るべきだぜ」
子供の、と言う単語に反応して庵が京に目をやります。
ヨッシャ。京は内心ガッツポーズです。無理やり押し倒してキスしても、いえそ
れ以上に及んでも構いませんでしたが、朝からそんな体力は使いたくありません(
レオナも側にいることだし)。
そんな時の最終兵器、子供。
庵は子供のためだったら普段よりも心が広くなるのです。母性を利用する悪い男
、草薙京。いつか罰が下るでしょう。
京が一瞬無防備になった唇に口付けようとした時、二人の間、京の眼前でオレン
ジの炎があがりました。熱にあぶられた京の髪が焦げ、タンパク質の焼けた独特
の嫌な匂いが広がります。
部屋まで一直線の玄関先でK'が何ごともなかったかのように靴を脱いでいました

「忘れ物した」
「K'…てめぇ…!」
ぷちぷちと京の忍耐の糸が切れる音がします。京の手はまだ庵に回されたままで
す。
そんな京に構わずK'はずかずかとやってくるとげしっと京を踏み倒しました。
「あぁ、悪ィな。足が滑った」
「ざけんなクソガキ!」
オレンジの炎をかざしいきり立った京を側にいた庵が足を払い沈めるとK'に問い
掛けます。
「何を忘れた」
「水筒」
「そうか。車に気をつけて行け」
「事故ろうが車が潰れるだけだけどな」
今度こそ行って来ますと扉の向こうに消えたK'を見送ってから、庵は地に伏す京
を見下し、その額がわずかに赤く火傷しているのを認めるとまた玄関に目をやっ
た。距離にして10メートル弱はありましょうか。
「あんなところからこんな正確に炎を出せるようになったとは…。成長したな、
あいつも」
「遠い目する前に俺への無礼を怒れ!!」
息子の成長に歓喜の涙を零す庵にレオナはそっとハンカチを差し出してやります

京は怒りの業火が胸を焼くのを止められませんでしたが、奴が昼どんな顔をする
かということを思いニヤリと顔を歪めました。
「何を笑っている。気色が悪い」
「いやァ?別にたいしたことじゃねーよ」
「…。ふん。まぁいいがな。貴様も早く支度しろ。今年こそ卒業するんだな」
「ぅ…」
ちくりと痛いところを刺されて平伏す京に構わず、庵はレオナを連れて幼稚園バ
スの集合場所に向かいました。



ある日の朝の風景。
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