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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.25
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2007.01.22

2006年12月04日

当初の予定では。
銀「出来ちゃった結婚で良いから結婚してくれない?」
高「馬鹿じゃねーの」
銀「大丈夫。俺公務員だから生活は安定してるし、子どもの一人や二人養える甲斐性はあるから。何より、先生頑張るからね。いろんな意味で」
高「死ね」
だった。


「センセー結婚して」
高杉はベッドに俯せたまま、机に向かい採点している銀八にそう言った。
銀八はその発言の中身に驚くこともなく赤ペンを滑らせまた一つ丸を書いた。
「んー?いや、無理でしょ。普通に」
素っ気ない返事に高杉は顔を上げて銀八の背中を見つめた。少し丸まったその背
中はとてもだらしなく見える。
視線を逸らさないままごろりと力なく横になって、高杉はまた言葉を投げ掛ける。
「できちゃった結婚でいいから」
「いやそういう問題じゃねーし」
「俺センセーの子なら孕めそうな気がする」
「馬鹿言ってんじゃないよ」
「本気」
「そっか。じゃあ病院行くか。頭の方のな」
「センセー」
高杉はベッドから降りてそっと銀八の背中に耳を当てた。
「人間頑張れば出来ないこたぁねーと思うんだ」
「高杉」
「励もうぜ子作り」
「…高杉…」
後ろから手を回して銀八の服のボタンを外そうとする高杉に、銀八は溜め息をつ
くと高杉の手を除けて振り向いた。
いつもの強気な雰囲気はなりを潜め、ただ切なげに銀八を見つめる視線を受けた
銀八も普段とは違う至極真面目な目で高杉を見つめ返した。
「高杉」
己のボタンを外そうとしていた手を握り締め、高杉の目を真っ直ぐに見つめて一
言ずつ言い聞かせるように重たい言葉を紡ぐ。
「たとえどんなに頑張ってもな」
「………」
その文脈で高杉の目に哀しみの色が滲む。
銀八の紡ぐ言葉は高杉が望むものではない。銀八自身それはわかっていた。
だが、高杉に現実を伝えることが銀八の役目だった。
銀八は一瞬、ふわりと優しく微笑むと高杉の手を放し背を向けた。
そして素っ気なく現実を言い放った。
「おまえが補習、さもなきゃ留年って事実はかわんねーから」
その言葉に高杉は現実を前にうちひしがれ銀八の背にしがみついて訴えた。
「そこをどうにか…どうにかなしに…」
高杉はかつてない程銀八を頼りにした。だが銀八はすげなく言い放つ。
「無理。おまえ補習。これ決定済み。受けなきゃ留年。残念でした」
「…ちくしょー…」
「頑張れ」
出席日数が足りず卒業危機に立たされている高杉は明日から3日間、朝から晩ま
での補習が言い渡されていた。それをこなさないことは即ち留年を意味する。
現実にうちひしがれ床に伏して嘆く高杉を背後に置いたまま、銀八は気にせず採
点を終えてそれを名簿に記し始めた。
そんな態度は高杉の目には非情で冷酷な仕打ちとして映る。
高杉は先程までの縋るような目から一転、恨めしげに銀八を睨み付ける。
「ってか単位足りなかったのは入院してたからなんだからよー、恩赦とかねーの
かよ」
「あるわけねーだろ。馬鹿ですかおまえは。たかだか2週間くらい入院してたく
らいでは普通足りなくなるわけねーんだから」
計算してギリギリでしか来てなかった罰だよとちゃっちゃと作業を終えた銀八は
伸びをしながら言った。
すっかりへそを曲げた高杉は銀八のベッドに戻りふてくされている。
今度はそんな高杉の背を銀八が見た。
「ってかなんでいきなり結婚なわけ?」
「…お祝い代わりに補習なしになっかなぁと」
「嘘吐くんじゃないよ。人のこと誘惑して俺のせいで身体痛いダルい学校行けな
いとかしようとしたんだろ。バレてんだよ」
「………」
銀八の指摘に高杉は無反応だ。言い当てられて悔しいのだろう。
そんな高杉の胸中を察しながら銀八はベッドの脇に座り込み、かたくなに銀八を
拒絶するような背中に向かってからかうように問い掛けた。
「子作り励むの?」
「励まねぇよ馬鹿。死ね」
「酷っ。自分から言い出したくせに」
背中を向けられたまま低く唸るように返された辛辣な言葉に銀八はわざとらしく
反応してみせたが高杉は無反応だった。
完全に拗ねてしまった高杉に銀八は仕方なさそうに溜め息をつくとベッドに凭れ
て天井を眺めた。
「子供出来たら結婚しよっか」
「病院行けよ。頭の方の」
「なんだ、本気じゃなかったのかよ。さっきの」
「………」
「俺は、結構本気なんだけど」
ぽつりと呟かれた言葉に高杉は体を起こし銀八を見つめて、目を逸らして言った。
「出来るわけねーだろ。子供なんて」
「だーよなァ。高杉は男の子だもんなァ」
「…子供欲しいのか?」
「ん?んー…、家族はちょっと欲しかったかもな」
「なんでもう過去形なんだよ」
「歳を取るとね、夢ばかり見ていられなくなるのだよ高杉クン」
「要するに現実に負けたんだろ、この負け犬がよォ」
「ほんと辛辣だよなおまえって」
それきり沈黙の落ちた部屋で互いに目を合わさず視線を相反した位置に落ち着けた。
「俺は」
先に口を開いたのは高杉だった。その声に反応して銀八は頭上にいる高杉に目を
向けようとして視線を動かした。
にょきっと銀八の視界に銀八の顔を覗き込んだ高杉が入り込む。
高杉は真っ直ぐに銀八を見つめて言い切った。
「結婚とかガキとかそんなんどーでもいいから、銀八と居てぇ」
「………」
単刀直入なその言葉に銀八は目を瞬かせて高杉を見つめ返したが次の瞬間目を細
めて笑った。
「なに笑ってんだよ」
本気で言った言葉を微笑で返され高杉が少し機嫌を損ねて唇を尖らせた。
「可愛いなぁと思って」
「あぁ?」
「怒んなよ。いや、ね?」
「んだよ早く言えよ」
くつくつと喉で笑いながら身体を起こした銀八はベッドの上に座り込んでいる高
杉を見上げ、微笑みをたたえたまま口を開いた。
「おまえのその真っ直ぐさが、ちょっと羨ましくもあるよ」
言いながら延ばした手で高杉を抱き寄せた。
「好きだよ高杉」
「―――……」
耳元で囁いて、高杉が口を開くより先に銀八は身体を離し黒髪を撫でた。
「さ、明日も朝早ェんだからさっさと帰れ」
そう言った銀八の背中が実際の距離よりも遠くに見えて。
「銀八」
高杉は何の打算もなく言った。


「俺と結婚して」

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