いろいろ置き場
なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。
2007.01.27
DOM設定のダチュオリ。
これでKOFのお話は最後。きっともう二度と書かないよ。
ってかこれらも何で書いたんだろう…?
「なぁ先生、俺たち付き合ってんだよな」 K'は“恋人”である八神にそう尋ねた。 「………」 尋ねられて、八神は採点していた三年のテストの手を止めK'を見た。 鋭くて真っ直ぐな八神の目で見つめられると、K'は反射的に毎回ドキリとする。 それが自分の余裕のなさを自覚させ、内心自己嫌悪に陥るのだ。 八神はしばらくK'をその瞳に映していたが、ふいとまた黒く染められた答案に目 を戻して作業を再開した。 「俺はそのつもりだが?」 おまえは違うのかと逆に問い返されて、K'は俺もそのつもりと返す。 「だけどよ…」 歯切れ悪く言い淀むK'に八神は焦れる様子もなく、機械的に赤ペンで○×をつけ ていく。K'の目には、それは年上で大人である八神のもつ余裕のようにも見えた 。 そして今胸に秘めている思いを口にするのは自分がガキだと思い知らされるよう な気がした。だが。 「だけど?」 八神に先を促され、K'は何処か破れかぶれにその胸中を吐露した。 「だけど…、付き合ってんならもっとそれらしいことしたっていいじゃねぇか。 もっとデ、デートしたり、き、き、き…、キスだってしてねーし…っ」 言って直ぐさま後悔した。やっぱ言わなきゃ良かった。穴があったら其処に埋ま ってしまいたい。恥ずかしい。なんてことを言ってしまったんだろう。 K'の心臓はかつてない程高鳴っていた。 それに対して最後の採点を終えた八神は、たったそれだけ言うのに顔は愚か耳ま で真っ赤に染め上げたK'にまた目を向け、彼の名を呼んだ。 「K'」 呼ばれて所在なさげに視線を彷徨わせていたK'は八神に目を向けた。 八神は眼鏡を外して指先でK'を招いていた。 その仕草ひとつすら大人っぽいと思うのは大人への憧れゆえだろうか。 K'は素直に八神に近付き、二人の距離を縮めた。 (?) ふわりと八神の匂いがK'に届いて、唇に弾力を感じた。 それは一瞬のこと。 「な…っ…」 キスされた。そう気付いた瞬間K'は目を見開いて八神を見つめた。口を開閉して も声にならない。首までが瞬時に赤く染まった。 そんなK'の態度に八神は首をかしげた。 「したかったんじゃないのか?」 「…んな…っ、やっ…~~~っ」 混乱の極みにいるK'の発するのは意味を成さない音ばかり。 そんなK'の有様を八神は自分なりに解釈したらしく、「あぁ…」と一人勝手に納 得していた。 「自分からしたかったのか」 「はぁ?!」 ん、と目を瞑ってK'からのキスを待つ八神にK'の緊張にさらなる拍車がかかった 。 (俺から、キス…?) 早鐘を打つ心臓の音がなによりも大きく聞こえた。八神に聞こえてやしないかと 思う程に。 覚悟を決めて、K'はそっと閉ざされた唇に己の唇を重ねた。 そしてすぐに距離をとった。 ただ重ねられただけのそれのあまりのぎこちなさに、八神は目を開けるとくすり と笑んだ。 「もしかしなくてもファーストキスか?」 「…っ!悪ィかよ!」 「いや…」 八神は笑ったまま顔を逸らし、点数を控えるため名簿を開く。側にあった眼鏡も かけ直した。 声はあげないものの肩を震わせて笑い続けている八神にK'は悔しさを覚えるが、 八神があんまりにもおかしそうに笑うので少しどうでもよくなった。 (先生が、こんなに笑うのなんて珍し…) しばらく八神の横顔をじっと見つめて、K'は八神に問い掛けた。 「なぁ先生」 「ん」 「先生のファーストキスの相手って誰だよ」 「―――……さぁ、誰だったかな」 おまえかもしれん、と目も合わせずに言う八神に、はぐらかされた、そう思った 。 「んなわけねーだろ」 「ふん」 八神はまだ口許だけで笑んではいたが、もう笑ってはいなかった。 (禁句だったのか…?) 何処か寂しそうな色を称えた瞳に何も言えなくて、どうした?、のたった一言をK' はついに言うことは出来なかった。 空が赤く染まる頃、二人は駐車場にいた。八神は車通勤だった。車に乗り込んでK' を見上げた。 「もうちょっとマシなキスが出来るようになれ。あれじゃ酷過ぎる」 「ウルセェ」 K'のすねたような態度に八神は小さく笑うとふと思い付いたようにK'を呼んだ。 呼ばれるがままに近付き、言われるがままに屈んだK'は、八神に胸倉を少し乱暴 に掴まれ引き寄せられ、驚いてる隙にまた重ねられた唇にさらに驚いた。 また声をなくすほどの驚愕の中にいるK'を尻目に、八神は悪戯に笑う。 「さよならのキスなんて、いかにも恋人同士らしいだろう?」 「……~~~っ…」 「じゃあな」 そう言うと八神は車を発進させた。 遠ざかる車を見送って、K'は舌打ちをした。 悔しい。自分ばかりガキ過ぎて。どうやったら大人なあの人に追いつけるんだろ う。 道端の石を蹴りながら帰路についた。 ふと思う。 (先生、今日は、よく笑ってたな…) いつも仏頂面か無表情でいることが多いだけに、なんだか新鮮だった。 脳裏に焼き付いた八神の笑みが蘇り、頭がそれだけで一杯になる。 (またキスしてくれんのかな…) 「ケ…シュ…K'?何ぼけっとしてるんだ」 「うぉあっ!!!」 背後から突然かけられた声にK'は背筋を反射的に伸ばし、八神と対面している時 とは違った鼓動の早さを自覚した。 振り返ればマキシマが不思議そうにK'を見下ろしている。 「な、なんだよ…びっくりさせんじゃねぇ…」 「びっくりされた方がびっくりなんだが。どうした?こんな道端でぼさっと突っ 立ってたりして」 「あ?」 我に返ったK'が辺りを見回してみれば自宅のマンションまであと十数メートルほ どで足を止めていた。学校から此処までの記憶は全くない。 「顔が赤いな。熱でもあるんじゃないか?」 「なっ…、ね、ねぇよ!さわんな!!」 伸びてきたマキシマの手を叩き落として自宅までズンズン歩いていく。 そんなK'に、マキシマは八神となにかあったかな、と思ったが子供の恋愛に親が 口出しするなど野暮なことだと自分のなかで片付け、K'を見守ってやることにし た。 鞄を落とすように下ろして、ベッドにダイブする。 軋むスプリングが落ち着いても、K'の頭は落ち着くことを知らない。 恋人同士という響きをもつことの嬉しさと自分じゃ八神と不釣り合いだという悔 しさが入り交じってK'の頭の処理能力を超えていた。 (チクショウ) もっと対等でありたいのに。 こんなキスひとつで戸惑うことなく、むしろ自分がエスコート出来るようになり たい。 「………」 そのために自分が出来ることを考える。考えて考えて考えて。 思い付かなかったK'はとりあえず明日の数学の予習をすることにした。
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