いろいろ置き場
なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。
夜を好む癖に光を求める高杉は心地よい冷たさを持った世界が気に入ったらしく、足取り軽く後ろを歩く銀八のことなど気にも止めず進んで行く。
そんな高杉がふらりと立ち寄ったのは公園で、一際明るい街灯の明かりに引き付けられるように近寄って行くと足を止めて漸く後ろを振り返った。
来い来いと手招きされるがまま銀八もそちらに向かえばぎゅうと抱き着かれる。
肩に押し当てられた高杉の頬は冷え切っていた。
そっと銀八も腰に手を回す。虫の音が遠く聞こえた。
口づけるより身体を重ねるより、こうして抱きしめられることを高杉は好むのだと気付いたのは何時だったろう。
何をしても、独りは寂しいと泣く高杉に銀八の方が途方にくれた。
独りは怖いと言う高杉は一つになることを望んでいるのに、二人は別の生き物だから、それぞれが個であるから、決して高杉の願いが叶うことはないのにそんな現実を銀八は口にすることも出来ず、ただ彼が佇む孤独の淵にひっそりと立ちすくむだけだった。
でも今は違う。
「………」
街灯が作る光の帯びに、くっきりと浮かぶいびつな一つの影。
二人は確かに二人として存在するのに、世界は一人として二人を照らし出している。
「朝なんざ、こなけりゃいいのになァ」
高杉が呟く。このままこうして溶けていたい、いっそこのまま影になりたいと、彼は言う。
独りでも生きていかなくてはならないのだよと、言わなくてはならない。結局のところ、最後は一人なのだから。
でも。
「そうだな」
独りぼっちが嫌なのは、銀八も一緒だったのだ。
「………」
この派手な金髪天パがそんなことを言い出すのは今に始まったことではなく、俺は何か言葉を口にするでもなく視線を向けて頷いた。
パチパチと爆ぜる写真。二人の思い出。
燃え尽きて行く様を俺らは黙って目に焼き付ける。
全てが灰にかわって、やっと金時は口を開くのだ。
「んじゃ、また付き合おうか」
俺は黙って目を向け、頷く。
そうして俺らは繰り返す。一から思い出を作り直して、きっとまた別れて全てをなくすのだろう。
分かってる。分かってて、俺らは何度も繰り返すのだ。
【金高(高校生×先生)】
プロローグ。
あの頃は若かったしね、愛情と性欲の入り交じった下心に充ち満ちた恋ならいく
つもしてきてた。
付き合った女の子の数だってそん時既にそれなりの数で、短くてその日限り、長
くて2ヶ月、そんな感じだった。
けど、俺が本気で誰かを愛したのは、あの時あの人が初めてだったと今でも思っ
てるよ。
俺、坂田金時が最初その名を聞いたのは女子がキャッキャとしていた噂話がたま
たま耳に入っただけのこと。
「ねぇ見た?高杉先生。も、すっごいカッコいい~」
「見た見た。ほんとカッコいい~。カッコいいうえに授業もめっさ分かりやすい
らしいんでしょ。もうハゲとは大違い。G組羨ましすぎるよ~。うちも高杉先生
だったらよかったのにィ」
興奮した女子の甲高いはしゃぎ声を聞きながら特に気にかけることもなく俺は廊
下を歩いていった。
別に先生がカッコいいとか、もちろん俺は興味なんてない。美人で巨乳ってんな
らまだしも。白く細い足がミニスカートから伸びてるのも悪くないよなぁなんて
つらつら考えてた。
階段をひとつ飛ばしくらいで登ってけばあっという間に屋上への扉の前にたどり
着く。
鍵が締まってるのは知ってるけど、扉の横にある男子トイレの窓をよじ登れば外
に出れることも俺は知ってる。
いつものように青空のしたに着地して、いつもと違うことに気付いた。
ふわりと俺の頬を撫でた風が鼻腔を過ぎていく。
(煙草の匂い…?)
それは屋上という名の俺の世界にはない匂いで、顔を上げて瞳に映った世界は、
まるで造りものだった。
多分あの日屋上にキューピッドがいて、そいつがハートを射抜く練習をしてたん
だ。俺はその練習台にされたんだ。
そう思うくらい一瞬だった。
青空を背景に、その人は立っていた。一目で脳裏に焼き付くような白衣と黒髪の
コントラスト。振り向き加減で、鋭いまなざしが俺の全てを縛り付けた。
目が離せなくて、まるで何処か遠くから世界を眺めているような感覚に陥った。
俺の視線の先にいる人はそんな俺の様子など意にも介さずちゃんと振り返り、不
愉快そうに眉間にシワを寄せてめんどくさそうに言った。
「てめー、そこでなにしてんだ?屋上は立ち入り禁止だ。分かってんだろォ?」
ラブロマンスとは限り無く遠い、そんな一言がその人の声を聞いた最初の言葉だ
った。
これが、俺と高杉先生の最初の出会いだった。
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こんな話だったらしいですよ。当初の予定では。
web拍手なるものを久しぶりにいじってみたら昔お礼に設定してたものがそのまんま残っていて、そのなかにこんなのがいました。ワォ!
そういえば書いたっけなー程度にしか覚えていない自分がいますよ。アッハッハ。
先生の好きな物教えてと尋ねたら特にないと返された。
何かあるでしょねぇ教えてよと繰り返したら、先生はくわえていたタバコを灰皿に押し付け溜息のように煙を吐き出しこう言った。
「俺の嫌いなもんなら教えてやるよ」
「え」
「理解の遅いガキと聞き分けのねぇ馬鹿だ」
そう冷たく言い放ち先生は部屋に消えて行く。
…なにあれ、あの人ってマジに先生?
俺は教師という人種の認識を改める必要性に迫られていた。
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意味なんてない。
「は?なんで」
「優しくないって言われた」
「うーん…、世界の果て?」
「じゃあ俺ちょっくら買いに行ってくるわ」
「え、マジで?」