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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.26
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2010.03.03
という訳でにょた銀高。


昔、松陽先生が開いてた個人塾で一緒だった二人。
成長し、高校はバラバラなところに行きました。
銀は地元の中堅からちょい下の公立高校。良家の高はお嬢様女子校。
周りに自分達の感情は内緒にしてる。


**************

『それは酷い裏切りでした』




「何処か行きたい。私達のこと、誰も知らないとこ。そんでもって、私達が愛し合うこと、赦されるとこ」
そうぽつりと呟いてみた。行けるわけない。本当は分かっていた。私達が赦される場所なんてこの世界の何処にもなくて、馬鹿なことを言ってるってことは自覚していた。けど。
ほんの少しの静寂のあとその言葉は返ってきた。
「じゃあ、行っちゃう?」
思いがけない返事に目を瞬かせて声の方を見れば、いつも通りやる気ない目が、私の方を真っ直ぐ見つめていた。



差し出された手を取って、行けるところまで行こうと電車に乗った。
何処へ行こう。行く先なんてなかった。けど、ふたりきり。電車に揺られる銀髪を見てたら、なにもかもがどうでもよくなった。
もう、違う学校のこいつが今何処で誰と何してるかなんて気にしなくていいし、“ただの友達”相手にくだらない嫉妬心を燃やさなくて済む。
だから、これでよかった。
短いスカートのせいで出てる膝上に放置されてた手に、自分の指先を絡める。
向けられた視線に視線を絡めて、いつもより少し甘えるように短い銀髪が跳ねる首に頭を寄せる。頭に頬を寄せられて、私は目を閉じた。
この列車が、私達の居場所まで連れていってくれればいいのに。



知らない場所まで来た。日も落ちて辺りも暗くて。どちらからともなくお互いの手を握り締めて身を寄せ合った。
不安なのは、きっと二人とも同じ。
街に明かりが灯る。ぽつんぽつんと暖かい光が増えていく。私はそれを、遠くのことのように見つめていた。
「とりあえず寝るとこ探そ。カプセルとか、ビジネスないかな。シングルでいいかな、狭いけど、っつーか取れるのかな二人で1つのシングル。あぁでもそもそも空いてるかな。ラブホは空いてるだろうけど案外高いからなぁ…」
耳のすぐそば、少し上の辺りから聞こえる声も右から左。私の意識は世界とは何処か遠くに浮かんでいた。
不意に家族の顔が思い浮かんだ。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、弟。
ヅラや坂本、他の友達、…松陽先生。
もう二度と会えないんだ。私達が置いてきたから。捨てたのは、私達。
世界はどんどん暗くなる。灯る明かりが私達の存在を否定して拒絶してるように思えて仕方なかった。
「とりあえず行…」
離れていく存在を引き止める。袖を引けば振り返って私を見つめた。
ほんの一瞬見開かれた目に私を映して、黙ったまま私に手を伸ばしてきた。
「なんで、泣いてんの?」
とめどなく溢れる涙が濡らす頬に添えられた指先は、優しかった。
仕方なさそうに笑って、私を抱きしめる温もりは心細さで凍えていた私に暖かかった。
ふわりと声が降ってきた。
「…帰ろっか」
「………っ」
しゃくりあげる私の背中を優しく撫でて、俯く私の手をひいてくれる彼女に私は消え入りそうな声で言った。
「…ごめ…っ、ね…っ、…ひっ、ぅー…」
私が、何処かに行きたいって言い出したのに。折角、願いを叶えてくれようとしたのに。
愛しい気持ちに嘘はないの。
けどなにひとつ捨てられない私はきっと、いや絶対、どうしようもなく最低だ。
これはこれ以上ない、彼女への裏切りだった。
「いいよ」
優しい声が鼓膜を揺らす。顔をあげれば彼女の背中が見えた。
「分かってたから。きっとこうなるって」
「………」
振り向かないまま、彼女は言った。
分かってた…? それはつまり。
私のこと、信じてなかったってこと。私が彼女のためになにひとつ捨てられやしない意気地無しだって、思ってたってこと。
それは事実だ。現にこうして私は泣いて、帰りたがっている。けど。
その言葉は、これ以上ない私への裏切りでしかなかった。

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