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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.26
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2009.10.17
神威の視線の大半は被写体かカメラに注がれている。
阿伏兎を見ていることなどほとんどないので、自分の方など見向きもせずに話し掛けられたことを、阿伏兎は不快には思わなかった。
「昔カメラは人の魂を取る、写真に写ったら死ぬって信じられていたらしい」
神威の言葉は突然だった。それに付き合うのももう慣れたものだ。
「あぁ、らしいなァ」
「迷信なんかじゃなくて、ホントだったらいいのにな」
常の笑顔を貼付けたまま、さらりと発せられた言葉に阿伏兎は眉を下げ、代わりに唇の端を上げた。
「は? 馬鹿かそれじゃ人殺しになっちまうし、誰も写らなくなっちまうだろうよ」
「人殺しだっていいじゃないか。俺は撮りたいね。現実のなかの一瞬を切り取るだとか、そんなんじゃなくて魂ってやつを取ってやりたい」
カメラの整備を終えたらしい神威はファインダーを覗き込んだ。
ピントを合わせながら言葉を続ける。
「人の心には4つの窓があるらしいんだ。自己も他者も知ってる窓、自分は知ってて他者は知らない窓、自分は知らず他者は知ってる窓、誰も知らない窓」
「今度はなんだ、哲学か? それとも心理学、社会学?」

「俺はその人の深窓をこじ開けてやりたい。闇に沈み込んでいた存在を暴き出して突き付けて閉じ込めてやりたい」
そこまで言って、神威はようやく阿伏兎に目を向けた。
「それが、俺の信念かな」
前に俺に聞いただろ?
そう笑いかけられて、阿伏兎は肩を竦めてみせた。



(人の言うことなんざ聞きやしないスットコドッコイも、案外話は聞いてるらしい)
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