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いろいろ置き場

なんか暗かったりするのが多いよ。あとは気に食わないから表に置こうとは思わないんだけどせっかく書いたからとかいうもの置き場。

2025.06.26
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2007.04.02
 ...2006/10/21(Sat)  No.376

 僕の望んでいることが、貴方も望んでいることなら良かったのに。


夜中、骸は突然目を覚ました。自分が何処にいるのか、横になったまま視線を動かして確認する。
此処は数日前から拠点にしてる廃屋。それを認識してから体を起こした。
夢を見ていた気がした。しかしどんな夢だか覚えてはいない。多分昔の、前世の夢。なんとなくそんな気がした。
月明りが差し込むだけの薄暗い部屋を見回した。
「…千種……犬…?」
小さな声で、無意識に二人を呼ぶ。返事はない。別室で寝ている二人に今の呟きが聞こえるはずはなかった。骸もそれはわかっている。
「………」
何処を見るでもなく視線を彷徨わせて、それからベッドから下り部屋を抜け出した。


足音と気配を殺しながら廊下を歩く。犬と千種の寝ている部屋の扉を音もなく開けて人の形に膨らんだベッドに近付いた。
そっと顔を覗き込んでみても二人は目を覚まさない。
「………」
二人の名を呼ぼうと口を開いて、思いとどまって伸ばしかけた手も引っ込めた。
寝息を立てている二人を骸はただじっと見つめていた。
「…よい夢を」
誰にも聞こえないような小さな声で呟いて、入って来たときと同じように部屋を後にした。


骸はまた廊下を歩く。自分の部屋には向かわない。彷徨うように、けれど意思を持って足を進めた。
そしてある部屋に辿り着くと、やはりまた音もなく中に入り込んだ。
ランチアの部屋。ランチアはベッドの上に座って壁に寄り掛かって目を閉じていた。
横になって寝ればいいのに。
骸はそう思いながらランチアに近付いた。ランチアは目を開かない。
骸はベッドの真横まで来て立ち止まった。そしてランチアをじっと見下ろした。
ランチアはまだ目を開かない。
ベッドが骸の重みで少しへこんだ。骸はベッドに片膝をついてランチアに手を伸ばした。ランチアはまだ目を開かない。
「………」
骸は伸ばした手をランチアの首に当て、力を込めた。最初は片手で、ベッドについていたもう片手も添えて両手でランチアの首を絞める。ランチアはそれでも目を開かない。
首を圧迫する力をじわじわと強くした。
「―――………」
殺意のない指。けれど骸は人を殺す時、殺意など抱かない。そして殺気も放たない。
殺す気などないのだ。壊すだけ。ただそれだけのつもり。
「殺るなら早く殺れ」
何時までもランチアの息の根を止めようとしない骸に、ランチアが目を閉じたままそう言った。
「そんなことしません」
骸は微笑みながら答えた。
「じゃあこの手はなんだ」
やっと目を開けたランチアは自分の首を絞めている骸の手に目をやった。
「起きてるくせに、狸寝入りなんてしてるからですよ」
骸は首から手を離して乗り出していた体を引いて、ベッドに座った。
「僕が部屋にはいった時から気付いてたくせに」
「………」
骸はランチアから目を離さないが、ランチアは骸と目を合わそうとしなかった。
そのうち骸もランチアから目を離して何処ということなく視線を一処に落ち着かせた。
そうして落ちた沈黙を裂いて、骸がぽつりと呟いた。
「どうしてでしょうね」
骸の言葉にもランチアは黙して視線は決して骸に向けない。骸もランチアの方はやはり見ていなかった。それでも独り言のように言葉を続けた。
「どうして、貴方は僕に気付くんでしょう」
あまりにも途方に暮れたように骸が呟いたので、ランチアは始めて骸を見て、またすぐに視線を逸らして事も無げに言った。
「おまえの気配は分かりやすすぎるからだ」
その言葉に骸は少し驚いたようにランチアを見た。ランチアは余所に視線をとどめてるので当然二人の視線は絡まない。骸はしばらくランチアを見つめた。
その間一度も視線がぶつかりあう事はないまま、骸は口を開いた。
「………そんなことありませんよ」
そっと両腕を持ち上げてランチアの方へ伸ばした。広い肩に触れて、抱き締める。ランチアは抵抗しない。
「貴方だけがいつだって僕に気付く」
たとえ誰も気付かなくても。ランチアだけが、何時だって骸に気付いた。
気配を完全に殺して犬と千種すら骸に気付かなくても、ランチアだけが骸を捉えた。
抱き締めたランチアの頭に骸は頬を寄せた。
「貴方が、貴方が僕を見つけてくれたとき、嬉しかったです」

 

*―――――――――――――――――――――――*
本当は子ムックとランチアさんのお話に持って行きたかったのに力尽きた。からネタだけ。

ある日ファミリー内で珍事件発生。、物があるべき場所になくてないはずの場所にあったり、屋敷中の窓が開けられてたり、あれ?って感じ。
そういえば骸の姿が見えないなって思ったランチアさんが骸探してすぐ見つけて、骸さんは見つけられたことにビックリして。そして笑うの。いたずらの犯人も骸さん。
ランチアさんに怒られるけど、ずっとニコニコ反省の色なし。

みたいな、過去が合ったりとか。ありえないなんてわかってる。夢だから。あたしの。目を開けたまま見てる。

東京事変の透明人間がモチーフ。
「僕は透明人間さ」って、ムックが思ってればいい。
「本当はそう願ってるだけ」って、ムックはランチアさんに見つけられて気づけばいい。なんて。
 

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